はじめに

2025年9月、米政府がイリノイ州グラナイトシティにあるUSスチールの工場停止を阻止しました。
「ゴールデン・シェア」と呼ばれる拒否権を行使し、企業の経営判断に直接介入したのです。
日本製鉄がUSスチールを買収した直後に起きたこの出来事は、同社の株価や今後の投資判断にどのような影響を与えるのでしょうか。
これまでの経緯:日本製鉄とUSスチール

- 2023年12月:日本製鉄がUSスチールを149億ドルで買収すると発表。
- 2024〜2025年初:労働組合や政権から強い反発。雇用や安全保障を理由に承認プロセスが難航。
- 2025年6月:トランプ政権が買収を承認。ただし「ゴールデン・シェア」という政府の拒否権が条件に付与された。
- 2025年9月:イリノイ州グラナイトシティ工場の停止計画に政府が介入。操業継続を命じる。
米政府が介入した理由
米政府が工場停止を阻止した背景には、以下の3つの狙いがあります。
- 雇用維持:工場では約800人が働いており、地域経済に直結。
- 地域経済保護:閉鎖すれば周辺の関連産業やサービス業にも打撃。
- 安全保障:鉄鋼はインフラや防衛に不可欠な「戦略産業」と位置付け。

日本製鉄の思惑と制約
日本製鉄は、老朽化した設備を整理し、効率的な電炉への投資を加速させたいと考えています。
しかし、米政府や労組の圧力により自由度は制約され、経営判断が単純な採算計算では進められない状況にあります。
今後の展開シナリオ
シナリオ①:管理されたリストラ
政府の承認を得ながら、段階的に老朽設備を縮小。投資計画は継続。
シナリオ②:政治優先の延命
雇用維持が最優先され、非効率な工場も存続。固定費の負担が長期化。
シナリオ③:景気サイクル次第の成長
米国のインフラ投資や製造業回帰が進み、需要増で統合効果が最大化。
株価への影響

短期(〜3ヶ月)
- 政治ニュースに敏感に反応。
- 工場維持は需給面ではややマイナス。
- ボラティリティ拡大。
中期(6〜18ヶ月)
- プラス要因:販路拡大、シナジー、米国需要。
- マイナス要因:固定費負担、政策介入リスク、鉄鋼市況の下振れ。
日本製鉄株は「買い」か「様子見」か?
- 買い派:政策による下支え+シナジーで収益改善を期待。
- 慎重派:政府介入で経営自由度が制約され、固定費リスクが高まると懸念。
結論として、投資判断は以下のチェックポイントを見極める必要があります。
- 政府の関与度合い
- 労組との交渉状況
- 投資計画の進捗
- 米国需要サイクルの方向性

競合銘柄と類似事例
競合銘柄
- 米国:Nucor、Steel Dynamics、Cleveland-Cliffs
- 欧州:ArcelorMittal
- アジア:POSCO、日本のJFE
類似事例
- 欧州:防衛・エネルギー企業に対する「ゴールデン・シェア」制度
- 米国:半導体・鉱物分野での国家主導的介入
まとめ
今回の米政府による工場停止阻止は、
- 政府:雇用と安全保障
- 労組:賃金と雇用
- 企業:採算改善と近代化
という三者の力学が交錯する象徴的な出来事です。

日本製鉄株に投資する際には、ニュースの見出しに一喜一憂するのではなく、政策と景気サイクルという二つの軸をどう読むかがカギとなります。



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